デヴィッド・ボウイをはじめ、世界的アーティストの代表的なポートレートやアルバムジャケットを数多く手掛けてきた日本人写真家がいる― 。鋤田正義、この5月で80歳。半世紀以上も第一線で活躍してきた彼は、今も尚、走り続ける。
デヴィッド・ボウイと40年以上も親交を結び、マーク・ボランを撮った1枚は、ギタリストの布袋寅泰の人生を決定づけた。どのようにして鋤田はアーティストたちと信頼関係を築き、唯一無二の“一瞬”を写真に刻むことができたのか?
各時代の多彩な作品の数々や孫のような若いアーティストと繰り広げる熱いフォトセッション、国内外で大反響を呼んでいる写真展・・・。鋤田の年齢を感じさせない旺盛な好奇心とチャレンジ精神、そして対象への温かな眼差しは、常に時代を見つめ未来を視野に入れている。ひとりのスターを長く追いかけることをライフワークとし、いくつもの《永遠の時》を獲得してきた鋤田。本作では、彼自身がアーティストとの思い出や写真への情熱を語るだけでなく、著名人が次々と登場し貴重なエピソードを披露する。
鋤田の現在進行形のドキュメンタリーとも言える本作は、『パリが愛した写真家 ロベール・ドアノー〈永遠の3秒〉』『セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター』などに連なる写真家のドキュメンタリーにして、『デヴィッド・ボウイ・イズ』『ギミー・デンジャー』『Ryuichi Sakamoto: CODA』に連なる音楽ドキュメンタリーであり、さらには『人生フルーツ』『二郎は鮨の夢を見る』など人生の大先輩たちの刺激的なドキュメンタリーに連なる1作でもある。
布袋寅泰のライブを撮影する鋤田正義。後日、ふたりでマーク・ボランが事故死したロンドン郊外を訪れると、鋤田撮影のボランの写真が飾られている。布袋の人生を決定づけた1枚だ。「この写真のせいで僕はギターを始めたんです」。
鋤田はボランの親友でもあったデヴィッド・ボウイを40年以上追い続けた。渋谷公会堂で「今の人が見ると信じられないぐらいの距離感」で歌う1973年の写真には、「完全にあの時代が写っている」と回想する。
鋤田の原点と言える九州の炭鉱町での幼少時代から、広告写真で頭角を現した1960年代、海外に飛び出し、ボウイとの運命的な出会いを果たした1970代・・・。
間もなく傘寿を迎える現在も、MIYAVIやDRUM TAOら若いアーティストとのフォトセッションに挑み、さらにはYMOの細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏のそれぞれと語り合い、1979年に発売された『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』のジャケット撮影の秘話を披露する。その他、ジム・ジャームッシュ、永瀬正敏、糸井重里、リリー・フランキー等、数々のアーティストたちの証言を交えながら、映画は鋤田の過去、現在そして未来を映し出す。